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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



これからお世話になる人に、心配かけちゃいけない。

何より、お父さんとお母さんの思い出を、悲しいものにしたくない。だから、



『……私はもう、両親がいなくても。大丈夫です』


ニッコリと、二人に向かって笑ってみせたんだ。

それからは叔父と叔母は、すみれに両親の話をしなくなったのだった。


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「すみれは両親が死んでも悲しまない。…愛のない、冷めた子どもだったよ」

当時、伯爵に引渡せなかった悔しさを滲ませながら、叔父はすみれに言い放った。


(お父さんとお母さんへの、愛がない?)


悲しまないように、してたのは

大切な思い出を、悲しいモノにしたくなかったから。
大好きだったから、


愛していたから



「…実の両親に会いたがらないなんて!親を求めないなんて!…すみれ、あなたの方がよっぽど“悪魔”よ」

すみれを軽蔑するかのような眼差しで、見下しながら叔母は言う。

(お父さんとお母さんに、会いたがらなかった?)


会いたかった
ずっと一緒にいたかった

ドレスも、宝石も、裕福な生活も、何も要らない。ただ、両親の側にいたかった

何で、私だけ置いて逝ってしまったの?
いっそ、連れていってほしかった。


「お父さんっ、お母さん…っ」


視界がぼやけ、手元が見えなくなる。

すみれはギリィッ…と床に爪を立て、手を握る。その手の上に、涙がポタポタと雨のように降り注ぎ濡れていく。今になって感情が湧き上がる。それは、


寂しさ 恋しさ 愛しさ

そして

悲しみと、憎しみ。



(私から、両親を奪ったのは…)


偶発的な、事故ではなかった
叔父様達により、引こ起こされたものだった


(私の、お父さんとお母さんを殺したのは…っ)

叔父様と叔母様、だった。


(憎い…)


ふたりが、憎い


(……許さない…許さないッ!)


すみれは涙で濡れた目で、叔父と叔母を睨む。

「ふんっ!そんな目を向けられても、怖くもない」

「むしろ、今までお世話してきたんだもの。感謝してほしいわぁ」

「…ッ、ッ」


言い返したいのに、言葉が出てこない。
言葉の代わりに大粒の涙が、次から次へと目からこぼれ落ち、床にシミをつくっていく。
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