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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



「どうゆう事さ?」

ディックはすみれの代わりに叔父に問う。


「そのままの意味さ。
頂くものがなくなったすみれに、価値などない。

……まだ10歳になるかならないかの子どもだ。親を求めるのは当たり前だろう?」

「…幼いすみれを千年伯爵に売りつけ、AKUMAにしようって魂胆だったって、ワケさね」

最低だな、とディックは叔父に吐き捨てた。

「しかし、すみれは両親を求めなかった!親の言いつけか何なのか知らんが、“もう会えない”の一点張り。

両親を生き還らせるのはすみれだけだと、何度も言ったにもかかわらず!」


(“生き還らせる”…)

すみれは上の空で、叔父とディックのやり取りを聞いていた。

(…ああ、思い出した)

まだこの屋敷に来たばかりの頃だった。




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『すみれ、両親に会いたくないかい?』

『ご両親を生き還らせるのは、すみれだけなのよ』

叔父と叔母が、優しく私に語りかける。


『……もう、会えないです』

『そんなことないぞ。すみれが願えば…』

『私が願っても。お父さんとお母さんの体は土に還り、魂はあの世に逝ってしまったもの』

『それでも、あなたが願えば会えるのよ?』


叔父と叔母は何度も言うも、私は頑なに耳を傾けられなかった。

『…両親が、教えてくれたんです。死んでしまった生き物は、土に還るって。』

大事にしていた小鳥が死んでしまった時に、学んだ事だ。





“えーん、えーん”

“すみれ、小鳥は死んじゃったの。生き物は皆、命が尽きたら土になるの…そんなに泣くんじゃありません”

“お母さん、だって…!”

“すみれは、この小鳥が大好きだったもんなあ。でも、ずっと悲しんでると、すみれのこと心配が心配で成仏できないぞ?”

“…お父さん…もう、泣かないっ”

“お、えらいぞ!”

“…じゃあ、泣くのは今日だけにしましょうね?
小鳥は沢山の幸せをすみれにくれたんだから、悲しい思い出にしたら可愛そうだわ”

“うんっ”






『…あんまり悲しむと、その人の事が心配になって成仏できないから。』

叔父と叔母が困惑している様子が、幼心でもわかった。

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