第13章 現在に至るまで
言葉を失い身動きできずにいるすみれに、容赦なく更に言葉を続ける。
「何故、そんなお前を引き取ったかわかるか?」
「……そんなの、わかるわけ…」
「質問を変えよう。
…お前を引き取ることで、私らに得られるものがある。それは、わかるな?」
「……両親の、遺産?」
すみれは自分名義の通帳残高がとっくの昔に底をついていた事実を、確認したことを思い出す。
「ご名答。その遺産や両親の事業を頂くために、すみれの両親には亡くなってもらう必要があった」
「は…?」
今、なんて?
「両親が亡くなれば、自動的に子どもに事業や資産が受け継がれる。その子どもが幼ければ、財産管理など到底無理。
その子ども、すなわちすみれを引取れば…あとは言わずもがな。」
「待って、私の両親は……事故で亡くなったんでしょう?!!」
「表向きはな」
「どうゆうこと…っ?!」
「そんな運良く金の卵のすみれを、手に入れられると思うかい?事故に見せかけて亡くなってもらったのだ。
……証拠など、残しはしない方法でな」
頭が、真っ白になった。
両親は事故死ではなく、
叔父様によって殺された…?
(私は…私は、自分の両親を殺した相手と、ずっと暮らしていたの?)
何年も、何年も。
何も知らずに。
(一緒に暮らしてた、慕ってた叔父様が…?
お父さんと、お母さんを、殺した?)
そんなこと、そんなこと…
「…嘘よ…」
怒りとか、悲しみとか、憎しみとか。
その事実が信じられなくて、信じたくなくて。すみれは体の力が入らなくなり、グラッ…と足元から崩れ落ちる。
「すみれっ!」
ドサッ
ディックが倒れこまないよう上半身を支えてくれるも、気づきもしない。
すみれは只々、その事実を飲み込むまでに、時間を要した。
「そもそも、私が提案した共同事業をすみれの両親が断らなければ、殺…おっと。事故に合う必要もなかったんだが、」
呆然としてるすみれと、叔父を睨みつけるディックを他所に叔父は喋り続ける。
「すみれを引取るのは簡単だったよ。親族と疎遠の、身寄りのない子だったからね!……そう、そこまでは簡単だった。
あとは、すみれをAKUMAにして片付けるだけだったのに」