第13章 現在に至るまで
「すみれ、お前にこの話は絶対に理解出来ないだろう。」
話についていけないすみれを、叔父はバッサリと切り捨てる。
「理解できるわけ…っ!化学的根拠どころか、証明すらできない話をっ」
「お前の!!そうゆう所を指摘しているのだよ。化学的根拠だの、証明しろだの
…本当に、可愛くない娘だ。」
「っ!」
今までだんまりを貫いていた叔母も、すみれが怯んだ隙に口を開き始める。
「…そ、そうよ。それに、実の両親と会いたいとすら思わない、愛のない冷酷無比な娘なんだから…っ!」
本当に幼い時から可愛らしさがなかったわ…!と、叔母は軽蔑するような眼差しですみれを見る。
「は…?」
(私は今、何を言われているの…?)
両親への、愛がない?
会えるものなら、いつだって会いたいにきまってる。忘れた日なんて、ない
だけど、会えるはずがない
とうの昔に亡くなってしまっているのだから
「…あと1つ、問が残っていたな」
叔父はタバコを口から離し、「冥土の土産だ」と言いながら煙を吐き出す。
「すみれ、お前なんて養子ではない。
……ましてや、遠い親戚でもない。
赤の他人だ。」
ザクり
心臓を、鋭利なモノで貫かれたような気がした
(…わかっていた、ことなのにっ)
戸籍謄本を、家系図を、見たではないか。
この目で、確固たる証拠を確認したではないか。
「そうよ、こんな可愛気のない娘なんて…!しかも私達と人種すら違う、アジア系なんて!」
おお、嫌だわ!と、叔母はまるで汚いモノを見るかのような身振り手振りをする。
グサり グサり
叔母の言動一つ一つが、すみれの体中を突き刺していく。
どこも怪我なんてしていないのに、体中が痛い。特に、心臓のあたりが痛くて苦しい。
指先まで血の気がなくなっているのに、体の芯は変な熱がじりじりと焦がす。
血は繋がっていなくても家族として迎え入れられていると思っていた。そう思っていたのは、
(私だけ、だった)
こんな二人と、家族じゃなくて良かったと喜ぶべきなのに。
それでも
一緒に過ごしてきた思い出や、恩があって
慕っていた者に突き放されるのは、悲しくて、惨めで、そんな自分が恥ずかしくて
消えてしまいたかった。