第13章 現在に至るまで
「死者を生き還らせると言って取引するなんて…死者に対する、冒涜だわ…っ!
そもそも、そんな嘘にひっかかるわけ」
「嘘ではない」
叔父はすみれの言葉を遮る。
「死者の魂を、この世に呼び戻す…それは、本当さ」
「…嘘よっ!そんなこと、できるわけっ」
「できる!」
再び、叔父はすみれの言葉を遮り話し出す。
「あのお方なら、そう。千年伯爵なら、それが出来るのだ!」
叔父は両手を広げ、彼をそう讃える。すみれの疑心暗鬼の目など全く気にせず、話し続ける。
「死者に会いたい生者を探し、彼に引渡す。それがすみれが問うた“危ない取引”と“亡くなった顧客リスト”に対する答えだよ。
…これがまた単純で、莫大な金を産む」
はははは!と、叔父は似合わない高笑いを講堂に響かせる。
「…全くもって、意味がわからない。死者の魂を呼び戻すなんて…ッ!」
「千年、伯爵」
すみれは何気なく、ぽつりと呟いたディックを見やる。
ディックの視線は叔父に注がれていた。その隻眼の目はとても冷静で、かつ軽蔑するような目つきだった。
ただ、その“センネン伯爵”というワードはディックにとって良いものではないらしい。
彼の頬には引きつった笑顔と、冷や汗が浮かぶ。
(一体なんなの?“センネン伯爵”って…)
叔父は再び話し出す。
「そして、彼の手によって死者の魂と、生者が1つになり、“AKUMA”が生まれる。
二人は片時も離れず一緒だ…永遠に、な。」
「アクマ…?」
“アクマ”とは、あの悪魔だろうか?
お伽話に出てくる、悪者の魔物。
叔父はとうとう、そんなキャラクターの名まで出しだした。
(どうかしてるわ…狂ってる)
「ばっ…」
バカにしないで!と、すみれが言いかけたとき、
「千年伯爵、死者、生者…そして、AKUMA。その話は本当なんさね」
「え…?」
ディックは引きつった笑顔で、叔父に言う。
「ほう?少年は何か知ってるようだな」
「…まさか本当に、“ブローカー”に会うとは思わなかったさ」
「ブ、ブローカー?」
ディックと叔父は一体、なんの話をしているの?
叔母を見るも、驚いた様子もなく私達のやり取りを見守っていた。すみれだけが、会話についていけていなかった。