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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



「取引は一旦中止だ」

叔父の声に、叔母とメイドが一斉にこちらを振り向く。


「どうして、すみれがここに…?!」

「お…お嬢様?」

「悪いが、君は仕事に戻ってくれ」


叔父はメイドにそう告げる。
メイドはこの状況に不思議そうな顔するも、言われた通り講堂をすぐに立ち去った。
それを確認した叔父は、叔母の耳元で何かを囁いた。


(…きっと、私が何故ここにいるのか説明をしたのだろう。)


叔母の顔つきが一瞬で冷めたものへと変貌し、キッとすみれを睨みつけた。

「…っ」

今まで慕っていた叔母から放たれた敵意に、すみれは怯みそうになるものの、足を一歩踏み出し、耐える。



「…では、何から話そうか?」

叔父は講堂の、壇上の机に直に座る。

「…“危ない取引”とは、先程のメイドと行おうとした取引も、含まれるの?」

「そうだよ」

叔父はさも当たり前かのように、さらりと言ってのける。ましてや「失礼」と一言、タバコをジャケットから取り出し一服しだす始末だ。


「…その、“危ない取引”って、なんなの?亡くなった人の名前が記載された顧客リストと、関係があるの?」

「ははっ、


…頭の良いレディは、嫌いだよ」

「…ッ、それは、具体的にどんな取引なの?」


叔父は冷たく肯定の言葉を言い放った。叔父の言葉に、すみれの胸が二重の意味でズキズキと痛む。

“危ない取引”に、亡くなった顧客リストが関係していた事へのショックと、

慕っていた者に「嫌いだ」と突き放されてしまった事への、悲しみ。


「…愛は、金を産むのだよ」

「愛?」

「そうさ。愛する者が亡くなった時、誰もが願うだろう?“会いたい”と、“生き還ってほしい”と!

…それが取引になるのだよ」

「…あなた、そんな事教える必要は、」

今まで静かに見守っていた叔母が口を挟む。

「お前は黙っていなさい」

ピシャリと、叔父が言い放つと叔母は数歩下がる。それからは何も言わなくなってしまった。


(『愛する者』『亡くなる』『取引』…)


すみれは先程の、叔母とメイドのやり取りを思い出す。

「…亡くなった人を“生き返らせる”なんて言って、取引をさせるの?」

「そうさ」

「亡くなった人は生き返らない…!」


私の父も母も、生き返らない。
死者は死者のままだ。
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