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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



「か…彼は、付き添い!唆したのは、私!」

「どういう事だい?」

「…教えて、真実を」

「真実?」

「…危ない事業をしている事、私が養子ではない事。




亡くなった顧客リストのこと!!」


緊張で、手が震える。息が上がる。
それを隠すように、すみれは声を張り上げて叔父に問いた。


「は…





ははははは!これは面白い!!
知っているのだな…なあ、すみれよ!」


叔父様は驚きもせず、動揺もせず。額に手を置き、「これは傑作だ!」と似合わない高笑いをする。その声は廊下に木霊した。


「良いだろう!お望みの通りくれてやろう、


……入れ」



銃口は相変わらず二人に向けられたまま、叔父は講堂に入るよう顎でクイッと促す。


「…すみれ、大丈夫か?」

ディックは震えるすみれに寄り添う。

「私は行かなきゃ…ディックは、逃げて」


だって、この先は何があるか分からない。
私がディックを守る術なんて、ないのだから。


「逃げない」

「でも…」

「言っただろ、乗りかけた船さ。自分の身は自分で守れる」

「…」

本当は、ディックに側に居て欲しい。怖くて仕方がない。だけど、そんな事は口が裂けても言えない。

すみれはディックに返す言葉が見つからなかった。


「すみれは、すみれの事だけ心配してればいいさ…最後まで付き添わせて?お願い、さ」

「俺、こう見えて場馴れしてるから大丈夫さ!」とニコリとすみれに笑ってみせる。


(ああ、なんて…)


私は、残酷だろう。
ディックを守る術なんか1つもないのに、これから起こる事は命の危機に関わるかもしれないのに。

ディックを巻き込んでしまった事に、一人ではない事に。とても安心してしまった。


(……ごめん…)


自分勝手な卑怯者な、私で。
ごめんね、ディック。

でも、


「…ありがとう」

「おう」

「だけど。本当に危ないと思ったら、逃げて」

「わかったさ。その時は一緒に逃げよう」


二人で手を取り合い、講堂の扉に手をかける。扉はギィィ…と音を鳴らし、二人を迎え入れた。暗闇の中心へ、一歩一歩すすむ。


(真実と、向き合おう。向き合わなきゃ)


いつの間にか、すみれの震えは収まっていた。


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