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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



屋敷に戻ってみたものの、普段の様子と明らかに違う。


屋敷の明かりは最小限にされて暗い上に、いつも大勢いる使用人達の姿も全く見当たらない。

異様な静けさに包まれた屋敷の廊下は、自分達の足音ですら不気味に感じさせた。


「ここの部屋にもいないさね」

「うん…」


叔父様と叔母様が居そうな仕事部屋、書斎、ホール、客間等を訪れてみたものの不在だ。

こんなにも移動しているのに、誰にも遭遇しないのが不思議だ。移動は捗るものの、逆に不安が募っていく。
住み慣れているはずの屋敷に、すみれがいることを歓迎されていないように感じた。


「ここにも居ないとなると…講堂かな?」

「講堂?」

「あんまり使用しないんだけど、色んな事に使ってるの。

催事とか、パーティーとか、取引の契約とか。礼拝堂として使用することもできる所。」

「…行ってみるさ」

二人は講堂を目指して再び移動した。









「…シッ!」

「っ!」

ディックが歩を止め、すみれに静止するよう合図する。

「…こっからは、なるべく足音を立てるなよ」

すみれは黙ってコクコクと頷く。


講堂に近づくと、やっとディックとすみれ以外の他人の気配を感じた。
はっきりと聞き取れないが、女性の声がする。これは叔母様と…


「…うちの、メイドの声?」

「メイド?」

「うん、叔母様とメイドだと思う」


何やら二人で話しているようだ。
二人のやり取りを聞くために、講堂の扉へ近づく。幸いにも講堂の扉は少し開いており、二人の声だけではなく姿も確認することができた。

耳を澄まし、やり取りを盗み聞く。



『…奥様、その話は本当でしょうか?』

『何度も言ってるじゃない。彼に会いたくないの?』


確かあのメイドは最近、婚約者を亡くしている。気の毒だなと思ったことを覚えている。


『会いたいに、決まってます…ッ!』

『あなただけなのよ。婚約者を生き返らせるのは』


一体、何の話をしているんだろう。宗教の話だろうか?

一瞬、ふと何かを思い出す



“あなただけなのよ。ご両親を生き返らせるのは”


(あれ……あれ?)


このセリフ、私も以前に聞いたことある気がする。いつだっただろう、この屋敷に来た時…?


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