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49番目のあなた【D.Gray-man】

第12章 【番外編・SS】Valentine 2021



バレンタインデー、当日。



俺はラッピングされた手作りトリュフを片手に、すみれの屋敷を訪れた。


「すみれ、どんな反応すっかな〜♪」


すみれの反応なんて分かりきっているのに、わくわくした気持ちでいっぱいになる。

年明けから毎日のように顔を合わせているのに、今日は胸がどきどきしている。


(やっぱ、こうゆうイベントは特別なんかな…)


特別なのは、すみれだからこそ。
俺は鼻歌交じりですみれの元へ向かう。いつもと同じ景色なのに、今日は少し色鮮やかに見えた。

いつも同じ場所で待っていてくれるすみれも、今日はいつもより増して可愛く見えてしまい、


「待ったさ?」

「あ、ディック!今準備してたとこ!」


俺だけが、緊張している。いつも通りにできるだろうか。


「コレさ!試しに作っ……」

「チョコレート?」


俺は簡易テーブルの“それ”を見て、動きを止めてしまった。



簡易テーブルにあった“それ”は、宝石のように輝くチョコレート達だった。



「…」

「ディック?」


つやつやなチョコレートでコーティングされていたり、白やピンク等のチョコレートだったり。
ましてや金や銀のトッピングで豪華にデコレーションされていた。


「あ、そのチョコは貰い物で…
ねぇ、ディックの持ってるのは、作ったの?」


そのチョコレート達を見てしまった今、俺の作ったチョコレートなんて。泥団子のように見えてしまって。


「…いやっ、何でもないさ!」


雲泥の差、なんてものじゃなくて。
きらびやかな箱に収まった相応なチョコレートの隣に、お世辞でも綺麗なラッピングとはいえない俺の泥団子チョコレートを並べるのは、


恥ずかしくて、情けなくなってしまった。


(…それに、あれは)


チラッと見えてしまった、メッセージカード。


(きっと、すみれのことが本命なんさね…)


自分のチョコレートも、本命にあげるものなのに。こうも違ってしまうのか。

メッセージカードをすみれに送ってきた男は、自由に想いを伝えることができるのだろう。そんな当たり前の事を、俺は出来ない。


「…っ」


名前も顔も知らない相手に、ひどく嫉妬した。

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