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49番目のあなた【D.Gray-man】

第12章 【番外編・SS】Valentine 2021



「うへぇっ?!ゲホゲホ、ゲッホ!!」

ココアパウダーが煙のようにもくもくと舞い上がり、そこら中を茶色に変えてしまった。




「な、なんとか出来上がったさ!」

歪な丸い形のトリュフには変わりないが、パウダー効果だろうか。なんとなくそれっぽく見える気がした。

「…でも、あんまり美味そうには見えないさね」



こんなに手間暇かけて、数時間かけて作ったのに。たったこれだけの量しか出来ねぇの?!

レシピ通り作ったけど、写真とちがくね?
てか、レシピには“簡単”って書かれてるけど!ちっとも簡単じゃねーさ!!


「お菓子づくりって、大変なんだな」

すみれがハロウィンで作ってくれたお菓子たちを思い出す。それはチョコレートやマフィン等、何種類にも及んでいた。

「ひとつひとつ、レシピ違うよな…」

どれだけの手間暇をかけて作ってくれたのだろう。

「もっと感謝して食わなきゃ、いけなかったさね」


お菓子を作ってみて、初めて大変さを知る。作るのも大変だが、その前後にある準備と片付けも含めたら…

「お菓子作りって、コスパ最悪じゃんか」

1番形が小さくて1番形が歪なトリュフをひとつ摘み、ディックはひょいと口に放り込んだ。

「…っん!見た目は悪ぃけど、味はなかなか」


美味しいではないか。
すみれが食べたら、どんな反応するだろう。


ーーー『え!?ディックが作ったの?!』

ーーー『うんうん、すごく美味しいよ!』


容易にすみれの笑顔や反応が想像出来てしまい、思わず頬が緩む。


「なんじゃ、さっきから独りで騒ぎおって」

ひょこっと、じじいが俺が作ったトリュフを覗き込む。

「……いんや、ちょっと作ってみただけさ」

俺は冷静に返事をするも、次の瞬間

「ほう、どれどれ」

パクっ

じじいがトリュフをひとつ、口に放り込んだではないか!

「んなっ、何すんさ!?よりによって1番形がキレーなヤツっ!!」

じじいを捕まえようと飛びかかるも、ヒラリとかわされてしまった。

「なんじゃ?ただ作ってみただけだろう?」

「う゛」

「気になる子にでも、あげるつもりだったかのぅ〜〜〜」

「う、うるせーっ!!」


ポーーーーイっ


じじいに取っ組み合いを挑むも、俺は呆気なく外へ放り出されてしまった。

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