第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
こうやって、楽しく過ごすことが再び出来ただけでも充分さ。
この幸せをしみじみ噛み締めていると、
クイクイっ
すみれがポインセチアを抱えて、俺の服をちょこんと摘んできた。
「ディック」
「ん?」
「ありがとね…大事にする」
「……………おう。
…あとあと!これ!!これも一緒に食いたかったんさ!」
(あっぶね…ッ!!)
か、可愛すぎか…ッ!!!
目を細め、頬をほんのり染め、顔をほころばせるすみれ。そして、この微妙な距離感。
(…っとにもう、すみれは!!!)
全っっ然わかってない!!!
分かられたら困るけど!!
俺の苦労を全っっくわかってない!!
折角年寄りみたいに穏やかな気持ちで、すみれと過ごせるようになったと思ったのに!
(結局、こうなんのかあ。俺…)
すみれの言動1つで全て持ってかれる。蓋をしていた下心全開の俺が顔を出す。
(すみれのこと、抱きしめてぇ)
つか、触りたい さ
「これはアップルパイ…?」
「…ガレット・デ・ロワ!フランスで1月に食べるお菓子さ。
この生地の中にちっさな陶器の人形が入ってて、それが当たるとこの1年幸せになれるとか」
何事もなかったように、俺はすみれと話し出す。
…もうこれは仕方ない、一生の付き合いさ。だって健全な男子だもん、俺。
トホホ、と心の中で俺は泣いた。