第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
“愛しい”
すみれに対して、この言葉がピッタリだと思えた今。誰よりも幸せになってほしいと、心から想う。
「ダイジョーブさ?」
「…うん、もう大丈夫だよ」
俺はすみれから手と額を離す。それが名残惜しく寂しいのは、秘密さ。
「じぁな!また明日さ!」
「うん!待ってるからね!」
“また明日”
この言葉を、こんなにも幸せに感じたことはあっただろうか。
(…明日は、早めに来よう。)
身体はこんなにもボロボロなのに。
冷え切っているはずの身体は、じんわりと暖かくなっている気がした。
俺はすみれから貰ったマフラーを優しく握り締め、ぬくもりを感じながら屋敷を立ち去った。
*
次の日。
「…これ、どうしたの?」
「言ったさね。沢山土産があるって!」
「いやいやいや、テーブルに乗り切らないよ?!」
いつもは本で埋め尽くされるテーブルが、今日は俺の持参したお土産のお菓子や民芸品等で溢れかえっていた。
…まあ、確かに持ってきすぎた気もしなくはない、さ。
好奇心旺盛なすみれは、「これなんだろう?」「わっ、開いた!」と1人でお土産とはしゃいでいる。そんなすみれの姿を見れて、俺は
(…やっぱ、沢山持ってきて正解だったさ)
人知れず、笑みが溢れるばかりだった。
「見たことないもん、いっぱいあるだろ?すみれに見せてやりたくてさ!
…あと、これ。Xmasプレゼント!」
「ええ!いいのに!」
「まあ、たいしたもんじゃねーけど」
「あ!」
「お、知ってる?ポインセチアさ」
「………ううん、知らない」
「Xmasの花っていえば、コレだなと思って!花じゃねーけど、真っ赤な葉がキレイだろ?」
「ほんと、お花みたい!」
(…知らなかった、か)
すみれがポインセチアを知らなくて、ホッとした気持ちと、残念な気持ちが入り交じる。
(赤いポインセチアの花言葉は…)
『聖夜』『祝福する』『幸運を祈る』
『私の心は燃えている』
(花言葉を知ってたら、どんな反応すんのか知りたかったけど…)