第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
“おかえり”
この言葉と、NAME1#の笑顔が欲しかったんだ。生きて、すみれの元へ帰ってきた実感が欲しかった。それだけで、充分なのに
「すげぇ、あったけえ」
(すみれの匂いと温かさで、いっぱいだ)
こんな、手編みのマフラーなんて。嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
「…めっさ、大事にする」
一度は距離を置こうとすみれを拒絶したにも関わらず、結局すみれの元に落ち着いてしまう自分にほとほと呆れてしまう。
「…今日は、もう帰るさ」
「えっ?」
「元々、すみれに会えるなんて思ってなかたったし」
「…なのに、来てくれたの?」
「まあ、その、なんっつーか…おう。だっ、だから!今日はもう十分なんさ!」
(おうって、俺…!もう少し気の利いた返事をしろさ!!)
すみれの顔を盗み見れば。
すみれの目は潤み、頬と耳は真っ赤に染まっていた。それは寒さからの火照りなのか、それとも…
俺の心臓がぎゅうっと締め付けられる。
「ッ…明日!また来るさ!」
そんなすみれを見ていられなくて、俺は踵を帰そうとし、
「ま、待って!」
がしっ
「ぐぇっ!ちょ、く、首!首締まるッ!」
すみれは窓から体を乗り出し、咄嗟に俺の白いマフラーの端を鷲掴みした。
くっ、苦し…っ!
「ご、ごめん…!いつ、来るの?」
「?、だから明日さ」
「明日の、いつ?何時っ?」
すみれの瞳が不安そうに揺れ、声も僅かに震えていた。ああ、俺は本当に心配かけてしまったんだと実感し反省するも、同時に嬉しく思ってしまった。
「……朝イチ、」
「え?」
「朝イチの9時。…早すぎ?」
「ううんっ、全然!!」
「…明日は遅めのXmasと年末年始のパーティーしようぜ!だから、」
「わっ?!」
俺はすみれの後頭部に手を回し、自身の方へ引き寄せ、お互いの額を突き合わせた。
「そんな不安そうな顔すんなって!…帰れなくなるだろ?」
ーーーーーーすみれが好きだ。
もちろん、イヤらしい意味で。
でも、すみれの事が大切だからこそ、手は出さない。
すみれは俺にとって、かけがえのない奴だ。
1人の女性として、人間として、愛しく思う。