第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「見た目は酷いけど、あんま気にせんで?」
あはは!と、俺は頭をかいて笑ってみせるもすみれは再び俯きだす。
ーーー違う。
「俺、こんなでもめっちゃ元気さ!」
ーーーすみれに心配させたかったんじゃない。
「……か、」
「すみれ?」
「…ばか、」
「へ?」
「ばか!ディックの、ばかばかばか!!」
「えっ、ちょ、なんさ?!」
「ばかって言ってるの!!」
「え、すみれ、さん…?!!」
突然、すみれが怒りだした。
思わぬ反応に、俺は思考も言葉も固まるしかなかった。
「…言いたいことは、いっぱいあるんだけどね」
ぐゎしッ
「は?!」
すみれは俺の服の首元を鷲掴みし、自分の元へ引き寄せる。
えっ、意外に力が強っ?!
えっ、ちょっと。ほんと、なん…っ?!
えっ、殺られる?!
ぎゅっ
「会いた、かった…!」
俺はすみれに、抱き締められていた。
「会いたかったよ、ディック」
「………おう。」
すみれからの包容に、再び思考が停止する。すみれのぬくもりが、匂いが。俺の五感のすべてを刺激する。
「心配、したんだよ」
「…悪かった、さ」
「ありがとう」
「え?」
「会いに来てくれて、ありがとう…すごく疲れてるでしょう?体も冷たいよ」
すみれは自身が着けていたマフラーを取り外し、俺の首元に巻いた。
「すみれ…?」
「あげる」
「え?」
「このマフラー、私が編んだんだ。Xmasプレゼントに、ディックに渡したかったの。
…遅くなっちゃったけど、メリークリスマス!おかえりなさい!」
「…」
「?、ディック?」
「…ん、ありがとさ」
視界が、涙で霞む。
俺は慌ててマフラーに顔を深く埋めた。
今、すみれの顔を見たら駄目だ。涙腺が緩んでしまいそうだ。