第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
会いたくて、仕方なかった。
恋しくて、仕方なかった。
「…つ」
すみれの姿を見ただけで嬉しくて、安心して。何かが込上げてしまって、涙が出てしまいそうだ。
(…そんな姿は見せらんねーさ)
俺は乱暴に目元をゴシゴシと擦り、何事もなかったようにすみれに声をかける。
「窓は閉めろって、言っただろ?」
すみれは気付いてないのか、なかなか顔を上げない。
「…遅くなって、ゴメンな?」
「……ディック?」
「おう」
やっとすみれの顔が上がる。
すみれはとても驚き、状況が飲み込めていなさそうな顔をしてる。
久々のすみれに、ドキッとしてしまう。鼓動が高鳴る。
あぁ、久しぶりのすみれだ。
「…ディック!!」
「そうさ」
「…ッ!」
「あ、(やべ)」
すみれは俺の姿を見て、口に手を当てた。
すみれの近くに行きたい一心で、自分の今の姿のことをすっかり忘れてしまっていた。
(まさか、会えるなんて思わなかったさ)
俺は普段の子息の格好ではなく、ブックマンとして仕事をする時の格好のままだった。
ましてやボロボロの身なりで煤まみれ、傷だらけの顔や手足だ。
すみれは下を向いてしまい、目線が合わなくなる。すみれにそんな顔をしてほしかった訳じゃない。俺は慌てて話だす。
「く…Xmas頃には帰って来れると思ったんだけど、手こずっちまってさ!」
「…そうなの?」
すみれは顔を上げる。
「ちょいヘマしちまって、この有様さ!」
「うん…」
笑ってくれよ。
いつもみたいに、“しょうがないな”って。
そんな悲しそうな、心配そうな顔じゃなくって。
「もしかして、俺臭ぇ?!こんなに汚れちまってるし…」
やべぇ!と、俺は大袈裟に慌てたするフリをする。
「そんなこと…、」
ごめんな、こんな時間に来て。
心配かけさせちまって。
それでも、会いたかったんさ。
生きてる実感が、
帰ってきた実感が欲しかった。
「こんな時間に来て悪かったさ〜!でも、すみれに会えて元気出たさっ♪」
ははは!っと、いつもの調子で俺はおちゃらけて見せるも、すみれは辛そうな顔をするだけだった。