第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「へぇ〜楽しそう!」
「その場にいる最年少の奴が、誰がどれ食べるか決めるらしいんで…俺最年少!ってことで、俺の分こっちさ♪」
ガレット・デ・ロワを、ディックとすみれの二人で分ける。
「「いただきくさ〜!」いただきま〜す!」」
パイ生地のシンプルなお菓子だが、サクサクしていてとても美味しい。パイ生地の食感と風味が際立つ。
二人で黙々と食べ進めると、
ザクッ
「「あっ」」
「…当たったさ!!」
「え、ディックも?私もなんだけど!」
「へっ?!そんなことある??」
ディックは口に入ってしまった陶器人形を、べぇっと見せてくれた。
それはすみれのガレット・デ・ロワからたった今出てきた、同じ白いウサギの小さな陶器人形だった。
「お店の人が、間違って2つ入れちゃったんだねえ」
「……じゃあ、今年俺ら2人とも幸せになるってことで♪」
「そうだね、作ってくれた人に感謝しないとね!」
二人で笑い合い、美味しい物を食べ、楽しい時間を共有する。
(幸せ、だなあ)
テーブルに並んだ、白いうさぎの陶器人形はまるで恋人のようで。
今の私とディックも、そう見えるのではないかと浮かれてしまうぐらい。
「俺さ」
「うん?」
「こうゆうハロウィンとか、Xmasとか、年末年始とか。どーでもいいって思ってた。」
縁がなかったってゆーのもあるけど、とディックはお茶を飲みながら話しだす。
「お祭り騒ぎが好きな奴らの楽しみだって。意味も分からず、どんちゃん騒ぎしたい奴らだって。…ちょっと、馬鹿にしてたさ。」
「…」
すみれは黙ってディックの話に耳を傾ける。
「でも、すみれとハロウィン楽しんでみて思ったんさ。日常の日々に彩りを与えるのは、たまにある娯楽なんかなって。
…こうゆう季節の祝い事の意味も大事だけど、それを誰かと共有して、過ごすことに意味があるんかなって。」
紅茶に目線を落とし、心の内を話すディックから目線を外すことも、頷く事も、すみれは出来なかった。
「何気ない日々の感謝を、こうゆうイベントに乗せて伝えるもんなのかなって…ちょっと、思ったんさ。
だから、」
カチャ…
ディックはティーカップをテーブルに置きすみれの隣へ移動し、腰を屈め目線を合せる。