第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「すみれ、いつもありがとう。
メリークリスマス」
「…、」
「そして、明けましておめでとう。…今年もよろしく、な」
「…っ」
「………なんか言ってさ。恥ズイ」
「ごめ、ちょっと…吃驚して。ううん、すごく嬉しくてっ」
ディックがあまりにも真剣に言うため、魅入ってしまった。ましてや見惚れてたなんて、絶対に言えない。
「ホントさ?」
「ほ、ほんとだよ!め、メリークリスマス、ディック!…こちらこそ。今年もよろしくね」
「手編みのマフラー、すっげえ嬉しかったさ。ずっと大切にする。」
「うん…沢山使ってね!」
「おう」
(ああ、私…)
やっぱり、自分が恥ずかしい。だって私は、
(ディックのような、そんな綺麗な理由なんて、ない。)
お祭り事にこぎ着けて、ディックに会いたかっただけだ
(…でも、この気持ちは)
ディックの事が好き
幸せになってほしい
この気持ちは誰にも言えないけど、私の唯一誇れる想いだ。だから、気持ちを込めて言うだけ。
「ディック。」
「お?」
「こちらこそ…いつも、ありがとう」
(大好き、だよ)
心の中で、すみれはそっと呟いた。
「……そんなこと、ねぇさ。
今日はっ!Xmasと年末年始のお祝いさ!」
楽しむぞー!と、ディックは拳を上げ急に立ち上がる。
「すみれにさ、こんなお菓子も買ってきたんだぜ!」
「…えっ、これ、食べられるの?!」
「これは東洋の土産でー」
二人は会えなかったXmasと年末年始の時間を埋めるように、日が暮れるまでパーティーを楽しむ。いつも静かな書庫室からは、その日は笑い声が耐えなかった。
*
(…私、上手く笑えてる?)
ディックに1つだけ、嘘をついた。
本当はポインセチアという花を知っていた。
赤いポインセチアの花言葉は、
『聖夜』
『祝福する』
『幸運を祈る』
『私の心は燃えている』
(きっと、ディックは花言葉まで知らなかったんだな)
知っていたら、この花をプレゼントしてくれる訳がない。
「なあなあ!すみれー!」
「ん?なあにー?」
すみれはディックの側に行く。
ディックと過ごすこの時間が愛しくて、幸せで。すみれは切ない恋心に、そっと蓋をしたーーーー。