第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
次の日。
ディックは約束通り、朝イチに訪れてくれた。
「…これ、どうしたの?」
「言ったさね。沢山土産があるって!」
「いやいやいや、テーブルに乗り切らないよ?!」
いつもは本で埋め尽くされるテーブルが、今日はディックの持参したお土産のお菓子や民芸品等で溢れかえっていた。
すみれが準備したいつものティーセットやお茶菓子は窓枠へ追いやられている。
「見たことないもん、いっぱいあるだろ?すみれに見せてやりたくてさ!」
すみれ喜ぶかなーと思って!と、にこにこしてディックは言う。
「、!」
その笑顔に、すみれはいとも簡単に胸を高鳴らせる。
久々すぎて、嬉しすぎて。今日は心臓がもたないかもしれない。
「あと、これ。Xmasプレゼント!」
「ええ!いいのに!」
「まあ、たいしたもんじゃねーけど」
「あ!(これは…)」
「お、知ってる?ポインセチアさ」
「………ううん、知らない」
「Xmasの花っていえば、コレだなと思って!花じゃねーけど、真っ赤な葉がキレイだろ?」
「……ほんと、お花みたい!」
「寒さに弱い植物なんさ。Xmasの花って言われてんのに。……だから。部屋を暖かくして、枯らさないようにしてくれよな?」
「ふふっ。そんなに心配しなくても、今はこの部屋も暖かいでしょう?」
「すみれはクッソ寒い日に窓開け放したりすっから、心配なんさ〜!」
やいのやいのと、いつもの賑やかなやり取りをする。
(……嬉しい、な)
こうやって、楽しく過ごすことがまた出来て。
しかも、自分の為にXmasプレゼントを準備してくれるなんて、心が弾んでしまう。
でも、それはディックだからだ。
大好きなディックだから、嬉しくて仕方ない。
(花なんてロマンチックだなあ…)
好きな人から貰えるなんて、女の人は皆憧れるのではないだろうか。
(ディックは知らないだろうけど、この花は…)
「ディック」
「ん?」
「ありがとね…大事にする」
「……おう。
…あとあと!これ!!これも一緒に食いたかったんさ!」
「これはアップルパイ…?」
「ガレット・デ・ロワ!フランスで1月に食べるお菓子さ。
この生地の中にちっさな陶器の人形が入ってて、それが当たるとこの1年幸せになれるとか」