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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》



「…遅くなって、ごめんな?」



聞き慣れた恋しい人の声に、すみれは恐る恐る顔を上げる。


「…ディック?」

「おう」

「ディック…っ!!」


なぜ会いに来てくれなかったのか、とか。
なぜ書き置きだけ残して行ってしまったのか、とか。


聞きたい事は山程あったはずなのに。
いざ、ディックを目の前にすると、何も言葉が出せなかった。


「…ッ!」

ディックを見て、思わず口に手を当ててしまった。


何故なら、ディックは普段の子息の格好ではなく、旅人のような大きなマントに、履き慣れた革ブーツ。

マントの裾に焼き焦げたような跡や穴があり、服は所々破れ煤まみれ。頬には大きなガーゼが貼られていた。

すみれが想像していた“事業”ではないことは、明白だった。



何処に行っていたの?
何をしていたの?

ーーーーそんなにボロボロになるほど、何か危ないことがあったの?


でも、それは二人の暗黙の了解で。
聞いちゃいけない事なんだろうと察する。


「…ッ」


何て言葉を発するべきなのか、何か発しようとするも、すみれの唇は震えるばかりで。
また、同時に自分が恥ずかしくなった。


(ディックがこんなにボロボロになっていた間、私が悩んでいた事って…)


自分よがりの、恋煩いの事ばかり。

「(恥ずかしいな、私)…」


すみれは自然と下を向いてしまい、ディックと目線が合わなくなる。何も言えないすみれを気遣ってか、ディックは慌てて話だした。



「く…Xmas頃には帰って来れると思ったんだけど、手こずっちまってさ!」

「…そうなの?」
すみれはディックを見るため、顔を上げる。

「ちょいヘマしちまって、この有様さ!」

「うん…」


何してたとか、どうしてこうなってしまったとか。理由は教えてくれないんだね


「もしかして、俺臭ぇ?!こんなに汚れちまってるし…」

やべぇ!と、ディックは慌てたするフリをする。

「そんなこと…、」


分かってるよ。
空元気なことくらい、無理してることくらい。わかるよ


「こんな時間に来て悪かったさ〜!でも、すみれに会えて元気出たさっ♪」

ははは!っと、いつもの調子でディックはおちゃらけて見せるも、すみれの目にはどこか痛々しいディックが映る。
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