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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》


※すみれ視点




Xmasが過ぎ、年末年始も過ぎ、
マフラーを編み終わっても、ディックは私の前に姿を現さなかった。


「寒い、なあ…」


書庫室の窓を開け放ち、真新しい雪が積もったばかりの、銀色の世界を見渡す。闇夜だからこそ、雪の白さがくっきりと際立ち美しい。
気づけば、部屋より書個室で過ごすことが多くなってしまった。

ディックはあのまま、新しい街や国で事業を始めたのかもしれない。
別れを言えないまま、ディックとの別れが訪れてしまったのではないかと、すみれは思うようになっていた。


「マフラー、せっかく編んたのになあ」


綺麗にラッピングまでしたが、無駄だったようだ。
すみれはビリビリと無造作に包装紙を破き、自分が編んだ白いマフラーを巻いてみた。

うんうん、すっごく暖かい。
暖かい、のに


「寒い、なあ…っ」


ディックは同じ土地に留まっていない事なんて、出会った当初から知っていたことではないか。
いずれこうなる事は分かっていた、のに。


「手紙1つ、出す事すら出来ない…」


ディックの事を、知っているようで何も知らなかった。

どうしたら会えるのかも、どこに居るのかも、手紙1つ出す事すら出来ない現状を、今更になって思い知る。

叔父様も叔母様も、ディックの事を話しても分からないと首を振るばかりだった。
この現状を打破する方法が、すみれには存在しなかった。


「受け身でいたから、こうなっちゃったのかな」


いつもディックから会いに来てくれて、勉強や様々な事を教えてくれて、私から行動を起こしたことはあっただろうか。

ディックに何か与えてあげた事は、あっただろうか。


「なーんにも、なかったな」


思わず、自嘲してしまう。
この現状を作り上げたのは、全て私自身が問題ではないか。


「せめて、お礼くらい言いたかったな…」


色んな事を教えてくれて、ありがとう。
楽しい時間をありがとう。

恋する切なさも、幸せも
教えてくれてありがとうって、


「今となっては、後の祭りだ」


すみれは窓枠に腕を付き、そして顔を伏せてしまった。


「……こんなの、嫌だ」

ディックに会いたい。
会ったら、ちゃんとーーーーーー





「窓は閉めろって、言っただろ?」

ディックの幻聴が聞こえた気がした。

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