第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
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サクっ サクっ
降り積もったばかりの、真新しい雪を踏みしめる。暗闇の夜でも、少しの街頭で道を埋める白い雪がよく見える。
(やっと、戻ってこれたさ…)
すみれのいる国へ、すみれの住む街へ。
(…約束、守れなかったな)
Xmas頃には会えるだろうと、書き置きを残してきたのに。Xmasどころか、年末年始も終わってしまった。
(すみれに、会いたい)
本当に、疲れた。
身体的にも、精神的にも、色々なものを削ぎ落とされてしまった気がする。
(会えなくても、いい)
いつもすみれが待っていてくれる、あの場所へいきたい。こんな夜なのだから、すみれが書庫室にいる訳がない。
(少しでも、すみれのぬくもりを感じたい)
その一心で、ボロボロの身体にムチを打って向かう。
(すみれ、何してたんだろ)
すみれと知り合ってから、こんなにも長く顔を合わせなかった事はない。
もしかしたら、姿をくらませてしまったと思わせてしまったかもしれない。
「俺の方から、距離を置かねえとって思ってたのに…」
むしろ今は、すみれのぬくもりを求めている。すみれの側に行きたくて仕方ない。
「言ってる事と、やってる事が全然違うさね……やっぱり、俺ってダセぇ」
ハハッと空笑いが漏れる。
すみれの屋敷に着き、裏庭の書個室がある方へ回る。
(すみれ、何してっかな…)
きっともう、夕飯は済ませて部屋でのんびりしているだろう。安全な、温かい部屋で。勉強や読書をしているに違いない。
(…良かった)
すみれは安全な場所に居て、本当に良かった。心からそう思う。
しかし、すみれの周囲で不穏な空気が漂っている事は事実だ。だから仕事として、“ブックマン”として、この地に留まっている。
(どうか、このままで。
すみれがこのままでいられますように…)
いつもすみれがいる書個室が近づき、中は暗い、
「はっ…?」
はずが、明かりが灯っている。
それどころか窓は開け放ち、窓枠で腕枕をし伏せってる、
すみれの姿が。