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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》



「…僕っ、し、死にたくないよぉっ」

「…ッ」


子どもは武器を手放し、頭を抱えて蹲ってしまった。恐怖に怯え、逃げ出すことも出来ずぶるぶると震えるばかりだった。


(少年兵、か)


なんで、俺よりもこんな幼い子どもが。
防護服どころか兵隊服でもなく、ヘルメットもなく。その辺にいる子どもの格好で、不釣合な銃を持っていた。
なんでたよ、


(なんで、こんな子どもが…っ)


ディックはふと子どもの周囲を見渡し、絶句する。
そこには子ども、女、男、老人、兵士達の、もう動かなくなった死体だらけであった。


「…げろ、」

「えっ…?」

「早く、逃げろ」

「…っ、」


子どもはディックに言われた通り、銃を手放したまま走り去って行った。
この戦火の中、無事に逃げおおせられるだろうか。子どもの安否を祈らずにはいられなかった。


「ほんっとに…ッ」


人間は、本当に愚かだ。
言語があるにもか関わらず同胞を殺し、奪い合う。力のある人間は益々力をつけ、弱者は奪われる一方だ。


(…あの光景にも、腹が立つ)


記録のため、この戦争を起こした上層部の奴らと顔を合わせた。彼らは上等な兵服やアクセサリー等を身に着け、高級料理と酒を飲食しながら戦場へ指示を下す。


『この兵隊達は囮にしろ』

『替わりはいくらでもいる』



『捨て駒だ。』


(…そのお前らの服も、食べ物も、酒も。全てその“捨て駒”から巻き上げた税金だろうッ?!)

ぐっ…と、思わず拳に力が入る。
戦争を引き起こしたこの国は、決して裕福ではない。人々は崩れかけた建物に住み、街を行き交う住民は痩せ細り活気はない。一目瞭然だった。

(人間、力を持てば皆こうなってしまうのか)

一時は国の為に、人の為に生きていても。
金と名誉に溺れ破滅の道へ歩んでいった奴らを沢山見てきた。
人間は歴史から、何も学ばない。

(さっきの子ども、もう少し裕福な家に生まれていたら…)

きっと、違う人生だったに違いない。与えられた運命を呪うばかりだ。








「……ディック、行くぞ」

「あぁ。」

じじいに呼ばれ、その場を後にする。
記録の為に再び戦場と化した街を駆け巡った。





いつの間にか。
すみれと約束したXmasの時期も、年末年始も。

とっくに過ぎ去っていた。
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