第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
ドンッ ドドドドドドッ
パンッ パンッ パンッ
廃れた町中の、彼方此方で銃声音が鳴り響く。
「っ、危ね」
「ディック!気を抜くでない!」
「んなこと、わかってらぁ」
減らず口を叩いてみるも、余裕はない。ここは戦場の真っ只中だ。
戦車が走り、爆弾や銃弾が飛び交う。気を抜いてしまったら、とばっちりなんてものでは済まない。命を落とすだろう。
(今回のログは、厳しいさあ…ッ)
記録のために、戦火の中をじじいと飛び回る。そのせいでマントも所々焦げ、自分自身も砂埃や煤まみれ。新調したストールも台無しになってしまった。
建物は瓦礫と化し、他方で火が上がっている。住民が干した洗濯物や、植木の植物達が燃えてゆく。
廃れた町とはいえ、そこに住む人間の生活が灰と化す様子を見るのは、
(…余計なもん見るなッ)
「きゃっ、こっちにも火が…!」
「ママーっ!ママどこー?!」
「わあああ!逃げろお!!」
戸惑う声、親と逸れ彷徨う子供、逃げ遅れた住民達の悲鳴を耳にするのは、
(…何も聞くなッ)
助かるモノを、命を。
全て振り切って素通りしていくのは、
(ちくしょう…ッ)
キツイものがあった。
(…俺は、ブックマンとして使命があるッ)
その為に、俺は。
今までも、これからも…
パァァァンッ
「ディック!!」
「……かはっ、大丈夫さ」
銃弾が、俺の首に向かって発砲された。
新調したばかりのストールが、はらりと地面に落ちる。
幸いに体には当たらず、俺の首筋を銃弾が横切っていっただけだった。
「…ちくしょう、」
ザッ
狙われて発泡されたのだろうか。
確認するために発泡された方へ目を向けると、それらしき人物が逃げ出した。
ディックもそちらに向かって走り出す。
(また狙われたら、たまんねぇさ…ッ)
正当防衛の為、使い慣れたサバイバルナイフを構え、曲がり角を一気に走り出す。
ザッ
そこにいたのは、
「う、うわあーーーーーっ!!!」
自分よりも遥かに幼い、子どもだった。