第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「すみれさあ」
「!(あ、食べてみれば意外と美味し…)
うん、なあに?」
「袋から見えるソレ、何か作ってるのぉ?」
ロードがスプーンで指すソレとは、毛糸玉のことであった。すみれは不思議な色をしたパフェを口に運ぶ。
「あ、これ?マフラー編んでるんだ」
「好きな人にぃ?」
「っ?!ゴホッ、ゴホ…ッ」
突然核心を突かれてしまい、すみれは思わず咳き込んでしまった。何でっ、わかっ…?!
一人で焦っているすみれを見て、可愛いなあ♪と茶化すロードだが、
「喜んでくれるといいねえ。でも、
ーーーよりによって、“ブックマン”の子かぁ」
「えっ?」
ぶっく…?
「ううん、何でもないよぉ」
ロードはニコぉっと笑ってみせるが、その笑顔はこれ以上聞くなと言っているようで、すみれは背筋に悪寒が走った。
「…ッ、ここのパフェ、食べてみると美味し」
「ねえ、すみれ」
ロードに会話を遮られる。
「最近、ティッキーが寂しそうなんだよねぇ。なんでかな〜」
「え…?」
「家族が寂しそうなのは、悲しいよねェ。誰がティッキーをそうさせるんだろぉー」
脈絡のない突然の話題に、すみれは耳を傾けることしか出来なかった。
「ティッキーを寂しがらせる奴はぁ、許せない。
家族をそんな目に合わせる奴はぁ、許さない。」
“許サナイ”
ロードの姿が、肌が、目の色が。
一瞬、肌は白から褐色に、黒目が金色に変貌したように見えた。
「…ッ?!」
再びロードを見るも、そこにはいつものロードが座っていた。だけど、笑顔のロードが、憤怒を滲ませているように見えた。
「あっ!ねえねえ、これからボクの家に来ない〜?すみれなら皆、喜ぶよぉ」
何故だろう。
この誘いに乗ってはいけないと、体中が警告を上げている。
「……折角だけど、またにするね。だって今日はXmasイブだもの!お邪魔したら悪いよ」
家族で楽しんでね!と、笑顔で返答した。
ちゃんと笑えているだろうか。指が、手が、カタカタと震えてしまいそうだった。