第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「あ、もう毛糸ないや」
新しい毛糸玉を繋げないと、と籠から取り出……あれ?うそっ!?
もう手持ちの毛糸玉を使い切ってしまっていた。
「やる気になったのにー!」
仕方ない、街へ買い出しに行かなくては。
(丁度、叔父様も叔母様も留守だし、何か美味しそうな物でもあれば次いでに買ってしまおう。)
叔父様と叔母様は二人で、Xmasから年明けにかけて仕事兼旅行で屋敷を留守にしている。
もちろんすみれも一緒にと誘われたが、仲睦まじい二人の邪魔はしたくなかったので断った。
しかし、断った本当の理由は
(…ディックが、来てくれるかもしれないから)
そう思うと、屋敷から離れることは出来なかった。
(でも、毛糸玉切らしちゃったしなあ…)
ちょっとだけ、買い物に出掛けよう。
すみれは重い腰を上げ、出掛ける支度を始めるのであった。
*
馬車をとある場所にて待たせ、すみれは手芸屋を目指し街を歩き出す。
クリスマスイブの街は、Xmasツリーや装飾、Xmasソングに溢れ、Xmasカラーで一色だった。
雪が積もっているにもかかわらず、屋台等もたくさん出ており、人がいつもの倍以上に歩道を埋め尽くしている。
すみれはXmasによる賑わいを眺めながら歩いていると、子どもたちが横を駆け抜けていく。
「ママ、このプレゼントが欲しい!」
「はいはい。プレゼントはサンタさんが届けてくれるわよ」
(サンタさん、かあ)
親子の会話を聞き、懐かしくなる。
両親が健在の頃まで、サンタの存在を信じていた。楽しいXmasは毎年訪れると信じて疑わなかった。
今はどうだろう。
Xmasという言葉を耳にして、昔のように無邪気に楽しめる心は、もう。
(大人になってしまった、ということかなあ)
それともXmasによるパーティーやお茶会、舞踏会等のイベントの多忙さに疲れてしまったのか。
(いつまでも、Xmasを楽しめる大人になりたかったなあ)
しみじみとそんな事を考えていたら、いつの間にか手芸屋へ着く。
カランコロン、と入店の鐘を鳴らしすみれはお店へ入っていく。
「この白い毛糸玉を、4つください。」
欲しい品は決まっているため、Xmasの買い物はあっという間に終わってしまった。