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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》



(本当に情けない。自分が恥ずかしい)


涙は枯れ流れなくなったものの、まだ鼻はすんすんと鳴るし、たまにしゃくりあげてしまう。そして目頭がとても熱い。

鏡を見なくてもわかる。
化粧は涙によって流れ落ち、きっと目元は腫れている。こんな顔では、パーティーに戻れないだろう。


(私、とんでもない勘違いしてた……)


夜風にあたって、これっぽっちも冷静になんてなっていなかった。
恋する自分に酔いしれ、何も見えていなかった。


「大丈夫か?」


私の落ち着きを見計らって、ティキが声をかけてくれた。私のくだらない事に巻き込んでしまって、申し訳ない。なるべく平気なフリをする。


「うん、大丈夫」

「……って、んなわけねぇよな」


よいしょっと、とティキはソファーから立ち上がる。そして部屋の扉に向かって歩き出した。


「言ってきてやるよ」

「?、何を?」

「俺とパーティー抜けて、その後送り届けるって。叔母様に。」

「い、いいよ!そんな!まだパーティーは中盤じゃ…」

「そんな顔じゃ、戻れないだろう?」

「ゔ……ティ、ティキはパーティー戻りなよ!皆待ってるよ」


ティキは人気者だ。
子息令嬢にマダム達、皆が首を長くして待っているに違いない。何より、こんな私情に巻き込みたくない。



「…俺も、ちょっとショックなことあってさ。」

「え?」

「すみれを口実に、サボらせてもらうわ」

「そ、そっか…」

「ここで待ってろよ」


いいな?と、ティキはすみれに念を押し部屋を出て行った。
パタンっと扉が閉じ、コツコツコツ…とティキの足音が遠ざかっていくのを確認して、すみれはソファーへ深く座り直した。


(ティキも、何かあったのかな…)


こんなに泣いたのは久しぶりのせいか、頭がズキズキと痛む。それでも思考は冴えていた。

私がこんなに泣いたのは、あの彼に言い寄られたのがショックだったからだろうか。


(…それもあるけど、違う)


それとも、あの彼に一夜だけの関係を求められたから?


(…違う)


助けてくれたのが、ディックだと自分の妄想を疑わなかったから。

ディックに思いを告げて寄り添えるなどと勝手に思い込み、そして現実に目を背けた愚かな自分に絶望したからだ。

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