第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
(叔父様と叔母様に、見られてないよね?!)
会話に集中しながら、二人の姿をさり気なく探す。
大丈夫だ、周囲にはいなさそうだ。
またお叱りなんて受けたくないものだ。
心の中でホッと、ため息をついた。
「そういえば、今日はこのパーティーに…」
「えぇっ!そうなんですの?」
「お会いしたいわ!」
ああ、話し相手をしてくれる子息令嬢の会話が頭に入ってこない。
「すみれご令嬢も、そう思いません?」
「えぇ。本当にそうですよね」
にっこり
目を細め、口角を上げ、笑顔を作り返事をする。
何が本当にそうなのかわからなかったが、とりあえず肯定の返事をする。
(…きっと、会いに来てくれる)
ハロウィンの衣装を、直接返すって。
ディックの書き置きに書いてあったもの
(でも…)
ハロウィン、とっくに終わっちゃったよ
Xmas頃に会えるって書いてあったけど、
もうXmas頃になったよ
(忙しいのかな…)
何かあったのかな?
まさか、事故とかじゃ…
酒によって少し赤らんだすみれの顔が、一瞬でサアッ青ざめる。
(…やめよやめよっ!縁起でもないことをっ)
すみれは首をブンブンと振り、悪い思考を振り払う。
ディックはいつだって忙しい。それでも会いに来てくれていた。だから、今回も
(早く、来て)
空になったワイングラスを見つめる。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、
「…すみれご令嬢」
「はい、何でしょう?」
(えっと。確か彼の名は…)
「少し酔われていらっしゃるようなので。…私と夜風に当たりに、行きませんか?」
彼は、すみれから空になったグラスを取り、執事に下げさせた。
(…酔ってなんていないけど、)
「そうですね、少し夜風に当たりたいです」
気分転換にはなりそうだ。
「それでは、御手をどうぞ。レディ」
すみれは素直に子息の手を取り、夜風に当たるためにバルコニーへ二人は足を運ぶ。
「……」
そんなすみれを、じっと見守る者が。
「あら、すみれご令嬢。あの彼と何処に…」
「手も早いし、女癖が悪いって有名な…」
「やだぁ、合意の上?」
彼女達のヒソヒソ話は、すみれの耳に届くことはなかった。