第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
《 すみれへ
次に会えるのはXmas頃だと思う。
すみれに借りたハロウィンの仮装は
大事な物だから、直接返すさ!
窓閉めて、暖かくしてくれよ。
風邪引くなよ
ディック 》
「…通りで、寒いわけだ」
仰向けで、厚い雲に覆われた曇り空を見れば。
ひらりひらりと、雪が舞い始めていた。
「ディックの、ばか」
何で、起こしてくれなかったんだろう。
そのまま帰ってしまったんだろう。
「もう、意味わかんない」
ディックが何を考えているのか、わからない
すみれは両手で顔を覆う。
すみれの心は雪が降る空と同じ、どんより曇り空。
身も心も寒いすみれに関係なしに、雪はこんこんと降り注いだ。
* * *
いくら拗ねようが、嘆こうが
時は皆平等に過ぎ去ってしまうわけで。
あれから1ヶ月程過ぎ、12月半ば。
Xmasシーズンとなり、すみれは多忙を極めていた。
(舞踏会にお茶会に、Xmasパーティーに…)
それに加え叔父の事業の付き合いに、私まで呼ばれている。今もその付き合いとやらに参加している真っ最中だ。
(……帰りたい、なあ)
ワイングラスを片手に、注がれた赤い液体を揺らして持て余す。
最近、あまり勉強が出来ていない。
貴族令嬢の仕事が忙しい、本当に。
Xmasは家族で過ごすものだから、12月24日と25日は避けてパーティーが開催される。
そのため、この12月中旬はパーティーの開催ピーク時期であり、あちこちで催される。
既にいくつのお誘いを断ったか、もはやわからない。それでも連日の様に出席をしている。
出席をしているのは、もちろん自分の務めであると感じているから。あと、
(ディック、いないかな…)
そんな淡い期待を抱いている。
ディックが使用人に扮していたことがあったから。もしかしたら、また使用人としているんじゃないか。または、パーティーに呼はれているんじゃないか。
そんなことをずっと考え、
「…令嬢、すみれご令嬢?」
「あっ、ごめんなさい!お話の続きを…!」
パーティー中、上の空になってしまうのは日常茶飯になってしまった。