第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「………んごっ、 ?!!」
ぱちっ
すみれは自分の寝言によって、一瞬で目が覚める。
色気の欠片もない、息の詰まったようなイビキをかいてしまった。
すみれは慌ててキョロキョロと周囲を見渡す。
…………誰も、聞いてないよね?!
「ヤバ、だいぶ寝ちゃってたな…」
んんんーっと伸びをして、固くなった体を思いっきり解す。窓ガラス越しに外を見れば、すっかり日が落ちて夕方になっていた。
パサッ
体を起こした際に、肩から何かが落ちた。
「ストール…?」
ディックのストールが、私の肩から落ちてきた。
あれ、私。ストールを肩に掛けてたっけ。
(…というか、窓も閉まっている)
閉めた覚えは全くない。
何故なら、ディックを待つために開け放しておいたはずだから。
「誰が窓閉めてくれたんだろう?叔母様かな…」
(ちょっと考えられないけどなあ。ここには誰一人寄り付かないのに。)
ふぁぁ…と大きな欠伸をしながら、机の上を整理していく。そして、ある1枚の紙に気づく。
「……!?、えっ、
うそっ……?!」
すみれは慌てて窓をバンッと開け放ち、身を乗り出して周囲を見渡す。
ある1枚の紙とは、ディックが残した書置き。
それを握り締めて、ディックを探す。
「ディック?!…ディック、いないの?!」
ディックが、来ていた!
まだ近くにいるかもしれない…!
「よい、っしょ…!!」
すみれはドレスをたくし上げ、足を晒す。
こんな姿、叔母様や令嬢たちが見たら悲鳴が上がりそうだ。しかし、気にしてなんていられなかった。
ディックがいるかもしれないという、期待が捨てられなかったから。
そして、すみれは窓から外へ飛び出した。
「ディック!」
すみれは重たいドレスの裾をを引きずりながら、庭を駆け回る。それでもディックの姿は見当たらない。
「ディック!どこ?!……わっ」
ガッ
ドサッ
躓き、派手に転倒してしまった。
直に地面へうつ伏せとなる。
「…ッつ」
すみれはそのまま、仰向けになる。
片手は額に当て、片手はディックの書置きを握る。
「…会いたかったのに、なあ。」
ディックの書置きは、こんな風に残されていた。