第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
ザッ ザ…ッ
枯れ葉を踏み鳴らし、すみれの屋敷へ足を踏み入れる。
「あ!」
書庫室の窓辺から、すみれらしき人物が見える。
「すみれ!」
一目散にすみれの元へ駆け寄る。やっと会えた嬉しさから、胸が高鳴る。
「久しぶりさ!ここんとこ、忙しくって……」
窓際に手を付き、すみれの顔を覗きこめば。両腕を枕にし、顔下半分を埋めて机で寝息を立てているではないか。
「………すみれー」
俺はどうしても諦めきれなくて、再びすみれの名を呼ぶ。
「すみれさーん?おーい」
よっぽど寝入っているのか、何度呼びかけてもすみれは目を覚まそうとしない。まるで眠り姫の様にすやすやと寝入っている。
「………キスしちまうぞー」
「zzz」
「…なんて、な」
どうやら、狸寝入りでもなさそうだ。
仕方ないか…と、すみれを起こそうと手を伸ばしかけた時、
「!」
すみれが寝ている机の上に、俺の黒いストールが置いてあることに気づいた。
「捨ててくれって、言ったのに…」
律儀に、とっておいてくれたようだ。
そんなすみれに、自然と笑みが溢れる。
「…つーか、こんな寒い日に。窓開けっ放しは駄目だろ」
すみれの周囲を見渡せば。
暖房設備も器具も無し。部屋とはいえ、ここは書庫室。温まる機能なんて皆無である。窓を限界まで開け放し、防寒用の服も着込まぬまま、すみれはドレス姿でいるではないか。
「こんなんじゃ、風引くさ!!」
俺は慌ててすみれに押し付けた俺の黒いストールを肩にかけてやる。
すみれは少しもぞもぞっと動いたかと思えば、少し態勢を崩し再び寝付いてしまった。
「世話が焼けるさ」
年上のくせに、と。
そんなすみれをついつい凝視してしまい、所々観察してしまう。
東洋の独得な目鼻立ちだが、肌は白くてキメ細かいな、とか。睫毛も結構長いとか。イタズラしたくなるような、綺麗なラインの首筋とか。
無防備に薄く開けられた、すみれの淡い唇とか。
性懲りも無く、吸い寄せられそうになる。
「…ッちくしょ。可愛いな、おい」
なけなしの理性を保つ。
流石に反省したばかりだからな、俺。