第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
『あ、それもういらんヤツだから!』
『え?』
『だから、ワリィけどすみれ。処分しといて欲しいさ……んじゃ、またな!』
『ちょ、待っ…!』
すみれの静止を求める声を聞こえないフリをして、俺は闇夜へ逃げるように立ち去ってしまった。
すみれから借りた猫耳と尻尾を、返すことすら忘れて。
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(そうさ、すみれに借りた仮装を返さなきゃ)
すみれにとって、思い出深い大事な仮装衣装だ。早く返してやらなければ。
(そうだ、早く会いに…)
すみれに、会いに行ける
すみれに会うための口実なんて、考えた事なかったのに。俺は何故か必死に理由を探してる。
(きっと、それは)
すみれに“恋人ごっこ”を求めてしまった、罪悪感と後ろめたさ。
そして、ブックマンとして。これ以上深耕を求める必要性がないと、分かっているからだ。
それでも俺は。
これ以上求めることが出来なくても、今はただ
(すみれに、会いたい)
その気持で、いっぱいだ。
「ーーーーなあ、じじい」
「何じゃ」
「このログ終われば、また戻るんだよな?」
「そうじゃ」
「…ん。(おし、やるか!)」
ディックは自然と気合が入る。
その後は無駄口1つ利かず、集中して取り組む姿しか見られなかった。
「…」
そんなディックの様子を、黙って見つめるブックマンにすら、気づかぬまま。
* * *
あれから、数日が過ぎた。
思ったよりも、ログと移動に時間を費やしてしまった。
「やっと戻ってこれたさ…!」
すみれがいる、欧米の地に。
もう11月半ばになり、旅立った時よりだいぶ冷え込むようになっていた。
「さっみぃ〜〜〜!」
前回のログ地より、断然寒い。
体は寒くても、気持ちは温かい。すみれに会えるワクワクした楽しみの気持で、一杯だから。
俺は、寒かろうが関係なしに、着の身着のまますみれの屋敷に向かって走り出す。
いつもは周囲に怪しまれないよう、貴族風の格好をするが、そんな時間すら今は惜しい。
ま、なんとかなるさ!
じじいが「待てっ!お前という奴は…ッ!」なんて、説教たれてたが、知ったこっちゃないさ。