第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
すみれを起こそうと思ったが、辞めた。
なんだか気が引けてしまったから。
「俺の為に、待っててくれたんだよな…」
俺は窓辺に肘をつき、すみれと至近距離で独り言を呟く。
「いつも、ありがとな」
でも、流石に暖かくしててほしいさ。
風邪なんて引いて、辛い思いなどして欲しくない。
「俺さ、」
誰も居ない、聞かれていない。今だからこそ。
決して言葉に出来ない、伝えてはならない想いを吐露する。
「すみれのこと、好きさ。
…タイプじゃねぇけど、すげー好き。」
初めて声にして、言葉にした想い。
自分で自覚していた想いなのに、“好き”という言葉が重くのしかかり、少し後悔した。
「だから、誰にも言わない。
…すみれには、絶対に言わないさ。」
好きな奴を傷つけるなんて、カッコ悪いだろ
「すみれに、幸せになってほしい。
…だから、絶対に言わない。」
すみれの寝顔に、決意表明をする。
やっぱ俺って、情けねえな
「あんまり、俺を惑わせるなよ。」
コツン、とすみれの額と己の額を合わせる。それでもすみれは起きなかった。
マジでどんだけ寝てるんさ、笑
「…もう、行かなきゃな」
実は再び、一次的にここを離れるログが舞い込んできたのだ。
再び旅立つ前に、どうしてもすみれに会いたかった。
でも、本当にもう行かないと
「……じじい、怒ってるさね」
じじいの静止を無視して、ここに来てしまったもんだから。
俺は色々な覚悟を決めて、すみれから離れる。
「…ちゃんと、帰ってくるから。
こんな寒い格好でいるのは、勘弁さ」
すみれが居眠りしている机の上に、散乱してるペンと用紙を拝借し書置きを残す。
すみれが風邪を引かぬよう、書庫室の窓を閉める直前に
すみれの瞼に、触れるか触れないかのキスを贈る。
「……これぐらい、ノーカンだろ」
なんだか照れくさくなって、頬を掻く。
そして、パタンと静かに窓を閉める。
「じゃあな。
ーーーー行ってくるさ、すみれ」
熱い想いを胸に秘め、ディックは颯爽とすみれの屋敷を立ち去ったーーーー。