第2章 奴隷の印
「っはぁ!………ぁっ…がぁあっ!」
○○がカラ松にしがみつき、背中に回された手が爪を立てる。力がこもっているせいでカラ松の背中に爪が食い込む。
「ぐっ…!そうだ、お前の全てを俺に伝えてくれ!お前の全てを受け入れよう!」
「ぅ……ぐ…ぁぁああああああっ!」
一際大きく叫んだあと、○○は気を失ってしまった。○○のことを聞こうとするチビ太たちを目で制しながら○○を横抱きにし、自室のベッドに寝かせて甲板へ戻る。
「全員揃ってるか?」
「へい!」
「彼女のことだが、奴隷市場で売られていたのを買ったんだ。詳しいことはデカパンが知っている」
デカパンが前に出て説明を始めた。
「彼女はハジメ国の王女ダスが、大臣のイヤミに国を乗っ取られてしまったんダス。国王は気のいい方だったダスからイヤミを疑いもしなかったんダスな。罪人として国を追われ、国王や王妃様、王女様は離ればなれにされたんダス。姫様が奴隷として売られていたとは、思わなかったダス」
「でもよ、デカパン。何だってあんたがそんなこと知ってんだよ、バーロー!」
「ワスはハジメ国の宮殿で医者をやってたんダス。ワスも国を追われ、行き先もなくて困ってる時に、船長に会ったんダス」
「ハジメ国はここからだと、数ヶ月かかるヨーン。危険な海域も通らないと行けないんだヨーン」
カラ松は気になっていたことをデカパンに聞いた。
「○○に飲ませた薬は本当に大丈夫なんだろうな?ずいぶん苦しんでいたが…」
「一時的な副作用ダスが傷は消えるダス。それより船長の背中を治療したいダス。血がにじんでるダスよ」
「かまわないさ。○○の傷に比べたらこんなもの、何でもないぜ。お前たちに言っておく。○○は俺の女として船に置く。変なマネしてみろ、サメの餌にしてやるからな。わかったな?!」
「「アイアイサー!」」
そこへ○○が起きてきた。カラ松たちが声も出ないほどに美しい。
「……っ、気がついたのか?体は大丈夫か?」
声をかけたが、目がうつろで体もフラフラしている。倒れそうになるのを慌てて支えるカラ松。
「大丈夫か?まだ寝ていたほうがいい」
支えながら見ると、体の傷は消えていた。手を取って手首を見るも、奴隷の証の焼き印も消えていた。