第4章 カラ松とおそ松たち
「そうだな…。その時はマイスイートハートをさらっていこうかな?…なぁんてな。さて、どうしたもんかな」
「そう……よね。海賊は海を捨てられないものね」
「俺の父…シャーザーの遺言でもあるんだ。海賊王になれ、ってな。俺はこの船を任されている。そうおいそれとは捨てられないんだ」
そう言うと○○はカラ松の顔を両手で挟んで口付けた。
「それまでは、私の恋人でいてくれる?」
その顔は今にも泣き出しそうだった。
「……ああ、俺にとってもお前は、唯一無二の女だ。出来れば離したくはない。だがお前は王妃となる人間だ。俺が独占していい女じゃない」
「…………カラ松…」
その時だった。
「ジョ?!ジョー!船長!海軍の船だジョー!」
見張りのハタ坊が叫んだ。見れば数隻の海軍の船が近づいてきている。
「全員普段通りにしてろ。戦うのは最悪な状況になってからだ」
「「アイアイサー!」」
やがて海軍の船がオザーキ海賊団の船に隣接して、隊長らしき男が聞いてきた。
「ここで何をしている?!」
「ああ、これはお勤めご苦労様です」
「うん?どちらかの公爵様ですかな?」
カラ松の身なりを見た男は貴族と間違えたようだ。
「ええ。これから国へ帰るところです」
「我々が護衛しましょうか?」
「いえ、それには及びません。心強い召し使いたちがおりますので」
するとおそ松が食ってかかった。
「はぁ?!召し使いだと?ふざっけんな!俺たちは海賊だろ?!」
慌てたのは兄弟たちだ。
「ばっ!このクソ長男!」
「海賊だと?!」
「ふっ。ばれちまっちゃあしょうがねぇ。そうともさ!俺たちはオザーキ海賊団。俺は船長のカラ松だ!」
「なっ?!総員、かかれぇ!」
「おーっと、待った」
おそ松が○○の首にナイフを突きつける。
「この女は本物の貴族の娘だ。下手に動いたらこの女の命がないぜ?それにこいつがお前らのせいで死んだとなりゃ、そっちの立場は悪くなるよなー?」
「た、助けてー!命ばかりは!」
○○もなかなか迫真の演技だ。海軍もすっかりだまされている。
「くっ!卑怯な…!貴族の令嬢ともあれば、むやみに攻撃はできん!退却だ!」
去っていく海軍を見送り、すっかり姿が見えなくなったところで大きくため息をついた。そしておそ松の頭をげんこつでどつく。