第8章 熱
雅龍は夏海に退し掛かると…
深い接吻を送った
体躯だけ…手に入れても…
虚しさは…更に深くなる
解っていても…
夏海を手離す気など皆無に等かった
ならば…
体躯だけで…良い
総てを…無くすより…
夏海の…体躯だけで…
夏海をなくしたくない
夏海を失いたくない
夏海…
夏海…
夏海は突然襲いかかった
雅龍の齎す熱に翻弄され…
抵抗さえ
捩じ伏せられ
雅龍を受け入れるしかない…と
諦めていた
その時…
夏海の頬に…
熱い雫が…
零れて…流れ落ちた
夏海は…
瞳を開けた
目を開け…雅龍を見る
すると…雅龍は苦しそうに
泣いていた