第6章 伴侶の儀式
夏海の頬を、夥しい血が濡らして行く
夏海は溢れる血を拭い
地面に…踏ん張った
雅龍…
雅龍…!
夏海は…心の中で雅龍を呼んだ
その時…時空を切り裂き…
龍が舞い降りた
龍は…夏海を尾っぽの陰に隠すと…
鋭い爪で…自分を引き裂いた
龍の…爪が…雅龍の姿を握り潰す
潰された側から…さらさらと消えて行く
雅龍は龍から人に姿を変えると
夏海の頬に触れた
「傷が…」
雅龍はそう言い、夏海の頬を舐めた
「もっと早く駆け付けておれば…」
雅龍が悔やむ
「雅龍…」
夏海は…雅龍を抱き締めて…
泣いた
もし…雅龍本体だったら…
想うと斬れなかった
雅龍じゃないと…想っていた
想っていたのに…
雅龍を斬れなかった…
雅龍は…泣きじゃくる夏海を抱き締めた
「泣くでない…」
優しく背中を撫で…落ち着かせる
夏海は落ち着くと、涙を拭い
雅龍から離れた
「ごめん…」
「謝らぬともよい」
夏海は雅龍を見上げた…
雅龍は夏海を見つめた
「もし…雅龍だったら…想ったら…
怖くて…斬れなかった…」
「夏海…夏海…」
雅龍は魘された様に、夏海を呼んだ
「儀式は失敗だね…」
此処まで来て…
悔しい
悔しくて、夏海は唇を噛んだ