第6章 伴侶の儀式
夏海の目の前に…
苦しんで…のたうち回る人がいた
『…助けて…』
夏海を見付けて…助けを乞う
夏海は…動けなかった
何故なら
助けを乞う人間が…
這って夏海の方へ…押し掛けて来るから
魔物なら…躊躇せずに斬れる
でも、押し掛けて来るのは…
人間
人間を……斬れる筈などない
夏海の動揺を…
手に取る様に感じる雅龍は
夏海を抱き締めると…
その眼を…隠した
「アレは人のカタチをしているが、人ではない!
殺らねば、殺られるのは必死
殺らぬのなら…此処でリタイヤするが良い」
此処で…リタイヤ?
冗談
此処でリタイヤする位なら…
こんな場所には来ないわよ
此処でリタイヤする位なら
神楽を捨てて…家を出ている!
リタイヤなんて出来るか!
夏海は、雅龍の手を外した
「リタイヤ?笑わせるわね!」
夏海は目の前の…人を…槍で突き刺し凪ぎ飛ばした
「此処でリタイヤするなら、私は今頃神楽を捨ててるわよ!」
昔…飛鳥井康太は、私に言った
お前が神楽を受け入れれぬなら…身の立つ様に外へと逃がしてやっても良いぞ!…と。
夏海は言った
『それは素敵ね。
でも私は神楽でしか生きられない存在
外へは行くつもりもないわ。』
飛鳥井康太にそう言った
神楽を捨てる気など皆無に等しい
そう告げた
だから私は闘うの!
夏海の瞳が…紅く燃えていた