第15章 またね
夏海と雅龍を見送り
紫雲は康太の所へと
思念を飛ばした
康太は…
総て知っているかの様に…
窓際に立ち…
外を向いていた
その背に
『二人を見送って参った』
と告げた
康太は
「そうか…」
と言い、瞳を閉じた
『二人で手を取り合って…
魔界へ行きました』
経緯を告げ
『夏海は笑顔で笑っていました
そして康太へ無償の愛をありがとうございました…と伝えてください…と仰せつかって参った』
と、夏海の…言葉を告げた
「笑っていたか…」
『ええ…誠…見事な笑みで御座いました』
「そうか…ご苦労だったな龍騎
無理を言った…」
『いいえ。二人を見送れて…本当に良かったと思っております
ではまた…』
紫雲はそう言い…一陣の風になり…
康太を優しく包み…消えた
榊原は康太の背を優しく抱き
「逝きましたか…」
と呟いた
「あぁ…逝った」
康太は瞳は…何処までも共に逝く恋人同士を想う
「彼等なら…大丈夫ですよ」
「あぁ…決して離れねぇ…からな」
「君と僕の様に…決して離れない愛があります」
康太は恋人に向き直り…
恋人の胸に顔を埋めた
榊原は恋人を強く抱き締めた
久遠の恋人達がいた
共に在ろうと生きた…恋人同士がいた
夏海の人生は…康太と酷似していた
何から何まで…酷似していて
ついつい世話を焼いてしまった
「二人なら…何があろうとも生きて行けます」
「そうだな…」
何があろうとも…
康太は祈りながら…
恋人の背を抱いた