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鏡の中から

第15章 またね




家族は…

夏海と雅龍と凰星を見送り

部屋へと入った

応接室のソファーに座り

顔を覆った

誰一人…部屋へと帰る者はなく

まんじりともせず…夜を送る

朝が来るのが…

怖かった

夜が明けて…

同じ日が始まらないのが

解っているから…

怖かった

夏海

夏海

我が子を想う

夏海…

バカ夏…

妹を想う

家族にとって…なくてはならない存在だった

明るく

太陽のように底抜けに明るい夏海

何時もポジティブに生きて

その真っ直ぐさに

幾度救われたか…

解らない



離れへ向かった夏海は

凰星を真ん中にして

川の字で眠りに着く事にした

凰星は…既に夢の国だった

母の胸に抱かれ

凰星は眠っていた

幸せそうに…

母の胸に顔を埋め

眠っていた

夏海は我が子を抱き締めた

雅龍はそんな二人を抱き締めた

「雅龍」

「何だ?」

「私、怖くないよ?」

「夏海…」

「雅龍がいれば、何も怖くなんかない」

怖いのは雅龍をなくす事だと…夏海は言う

「夏海…夏海…」

雅龍は夏海を抱き締め…泣いた

肩を震わせ…雅龍が哭く

「私の人生は濃縮して倍速で駆け抜けた
悔いなんて1つも遺してない
唯1つの心残りは…我が子の事…
側にいられぬ母を…
何時か…恨むかも知れない…

それは辛いかな…」

それだけが…辛い

と、夏海は言った

「総ては…我が悪い…
我が望んだから…」

望まなければ…

夏海は…

死ぬこともなかった

出逢わなければ…





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