第15章 またね
挙式を終え
ウェディングドレスを脱ぎ
大切にしまう
継ぎに、このドレスが着られるのは
凰星の結婚式
大切に…大切に…
しまっておかなきゃ
夏海が着替えると、香住がドレスのケースを持った
そして帰路へ着く
控え室から出ると、雅龍が凰星を抱き上げて、夏海を待っていた
夏海は雅龍と凰星の側へ行き
凰星の頬にキスをした
「凰星、今日のママは綺麗だったでしょ?」
誇らしげに聞く
「凄く綺麗だった…」
雅龍が答え、夏海は笑った
「帰ろうか!」
「あぁ。帰るとしようぞ!」
仲の良い親子が…
連れだって歩き出す
春海は夏海に
「帰りレストランに行くからな!」
と呼び掛けた
「なら凰星は、お子さまランチね♪」
夏海は我が子へ話し掛ける
「ちょう…たべゆ…」
凰星が、たどたどしい言葉で夏海に応えた
「マァマァ~」
母の手を恋しがり…凰星が手を伸ばす
夏海は凰星を出してもらい、その腕に抱く
お腹を痛めて産みし我が子
大切な、大切な、命より大切な存在
愛してやれる時間の短さを考えれば
胸が痛み出す
「凰星、誰よりも愛してる!」
頬を擦り合わせ
我が子の熱を確かめる
腕にずっしり来る重みを抱き締め
夏海は歩き出す
母の愛を…
どうか…
忘れないで下さい
願い
夏海は凰星を抱き締めていた
レストランで食事を取り
細やかながら夏海と雅龍の結婚を祝う
家族に祝われ、最高に幸せを抱き
家へと着いた
夏海は凰星を胸に抱き
「今日は親子水入らず過ごすね」
と告げた
「ええ。そうしなさい」
香住が答えると
夏海は家族に深々と頭を下げた
そして、立ち直ると
「またね。」
と、片手を上げた
そのまま…背を向け
夏海は雅龍と凰星と共に
離れへ向かった