第15章 またね
礼二は…嬉しそうに…
そんな子供たちを見詰めていた
「父さん、私、今日結婚式を挙げるから!」
夏海は父にそう言った
礼二は信じられず…夏海を見た
「だから、写真を沢山遺してね
バージンロードを一緒に歩いてね」
夏海は父にそう贈った
父は…娘の想いが嬉しくて泣けた
残りの時間は…
もうないだろう
昨日まで臥せっていた
なのに…元気な姿で帰ってきた
この姿が…
長く続かないのは…
知っていた
だけど…親だから…
願ってしまう
夢見てしまう
願わくば…
夏海の時間を…もっとください…と。
若くして逝く
我が子を…
引き留める術はない
父は…揺れる夏海の姿を
何時までも…瞳に焼き付けていた
春海は…
しんみりとなる…時間が堪らなく嫌だった
そう言う所は…夏海と似てた
「バージンじゃないのに…
バージンロードを歩きますか…」
ため息混じりにそう言う
夏海は兄を蹴り上げた
「痛いぃぃぃぃ~」
春海は弁慶の泣き所を撫でながら…
ふーっ ふーっ息を投げ掛けた
「余分な事は言わなくて良いのよ!」
夏海が怒鳴ると
春海は凰星を抱き上げ
「凰星、嫁に貰うなら…お淑やかな女性にしなさい…」
愚痴を溢す
「凰星に変な事を言わないでよ!」
夏海が怒るのを楽しげに春海は笑った
永遠に続く
時間が…欲しいと
家族は…心から思った