第15章 またね
夜更けまで…家族は時間を惜しむかのように話して酒を飲んだ
凰星は、大きな縫いぐるみの膝で寝ていた
「父さん、母さん、お兄ちゃん…
本当にありがとう…」
夏海は立ち上がると…家族に深々と頭を下げた
香住は「何言ってるのよ…」とその先を…遮った
「私は…紫雲さんに頼んで2日だけ時間を貰いました
この2日で…出来なかった事をしようと想います」
夏海は2日で…
家族に告げた
夏海に遺された時間は…
香住は…目を覆った
礼二は…天を仰いだ
春海は…テーブルに突っ伏した
あまりにも酷い現実
夏海に遺された時間の短さに…
家族は言葉を失った
「私は後悔なんて遺してないから!」
夏海はそう言い…
笑った
夏海の日の…穏やかな波のように
包み込む様な優しい笑みだった
香住は涙を拭い
「そうね!神楽を凰星に継がせる為に…
弱音なんて吐いてる…暇なんてないわね!」
と気丈に振る舞った
礼二は能天気な何時もの父になり
「凰星が釣りが出来る年になったら海に行こう…
自転車が乗れるようになったらサイクリングに行く
夏海が送れなかった日々を…父は凰星と過ごそう…」
約束した
夏海の出来なかった…日々を継いで行くことを…