第13章 愛しき日々
「煌星と言います。
名前は変えないで下さい
煌星は、煌星のままで、 凰星に逢わせて下さい。」
二人は1つなのだから…
と、康太に頼むと
康太は夏海の願いを聞き届け
「承知した。煌星と言う名は変える事なく…お前の子供を誰より愛してくれる様に頼もう
何時か煌星はトナミ海運を背負って立つだろう
その時…二人は必ず出逢う事となる
血は…誰よりも濃い
二人は互いの存在を確実に見付け出し感じ取るだろう!
オレはそんな二人を見守ると約束しよう!」
と、夏海に言葉を送った
夏海はその言葉を受け取り
深々と頭を下げた
「来週には…」
夏海が言い掛けた時
「戸浪海里がお前の家を訪問する
お前は自分の目で確かめろ
その人間に…煌星を託せるか
その目で確かめれば良い!」
康太の愛だった
家の為に…
命を削り…次代へ繋げて果てて逝く
夏海にしてやれる最大の…愛だった
総ては家の為、神楽の為
康太と酷似した夏海を…
1つの悔いもなく…黄泉へと送り出してやる
願いにも…康太の愛だった
夏海は…その康太の愛を受け止め…
胸に納めた
感謝してもしきれない…
無償の愛を…受け止める
夏海は気を取り直して康太に報告せねばならぬ言葉を続けた
「お婆様は…我が子の一歳の誕生日を迎える前に…旅立ちました」
夏海は…
お婆様が…息を引き取った事を告げた
康太は「そうか…逝ったか…」と呟いた
夏海の子供が産まれてからのお婆様は、日々根回しに忙しかった
神楽の屋台骨を解体する様な出来事だから…その苦労は…計り知れない
能無しの一族は躍起になって、われこそは…と名乗りを上げた
それを鶴の一声で…黙らせたのが
飛鳥井家 真贋 飛鳥井康太だった
最初は一族に関係ない者は黙れ!
等と…文句を言っていた親族を黙らせ
次代の後継者は神楽凰星
その後見人は神楽 春海
神楽は此より100年続く英華を保証された
と、言われれば…誰も反論は出来なかった
根回しをして
体を酷使して…
お婆様は…眠る様に…
永眠した
91才…春の夜の出来事だった