第12章 母になる
二人きりになると…雅龍は夏海の髪を撫で
頬にキスを落とした
「お疲れ…夏海…」
「見てくれた?」
「あぁ。見た。夏海と我の子を腕に抱いた」
雅龍は夏海を抱き締め
「夏海…ありがとう…」
と、想いを告げた
「雅龍の子を生めて…幸せだよ私」
夏海は…弱っていた
出産で…耐えた日々が…
明らかに夏海の体力を奪い
その命を…削っていた
母となり…
我が子をこの世に産み出した
残された時間は…
誰よりも短い
短いけど…
私は誰よりも幸せだから…
夏海は笑う
私は人生を短縮して濃厚にしただけ
倍速で駆けて行く…
人生だけどね
ダラダラ目的もなく生きて行くよりは
ずっと良い
夏海はそう言い、何時も笑う
その胸に…
どれ程の葛藤があり…
どれ程の…可能性を…
奪ってしまったか…
「雅龍、離さないでね」
「絶対に…離しはしない!」
雅龍は夏海に接吻し
「共に逝こう…」と約束した