第12章 母になる
夏海を見れば…
この命は…
そんなに長くはないと…伺える
命を懸けて…
夏海は我が子をこの世に送り出した
その想いは…
誰よりも…深く…
誰よりも…断ち難いだろう
親として…
子と離れたい親などいない
「雅龍を受け入れてくれて…本当にありがとう」
白龍は…心から夏海に礼を述べた
きっと雅龍は…
夏海に出逢わなかったら…
愛に疲れ…
絶望し…
消滅してしまったかも知れない
自分を消し去る…
夢も希望もない…雅龍を案じて…
見守ってきた…
その雅龍が…親になり…
生きて行く伴侶を得た
この先…何があっても…雅龍は夏海を離す事なく生きて行くだろう…
「本当にありがとう…」
母の愛を…夏海に伝える
夏海は…白龍に抱かれ…
幸せそうに微笑んでいた
雅龍の両親は…
飛鳥井へ挨拶に行き…帰ると告げた
香住は、お婆様と二人で雅龍の両親を飛鳥井へ送ると言い
帰宅を告げた
黄龍は夏海に「また逢おう」と言葉にした
白龍も夏海に「また逢える日を楽してます」と告げた
また逢う日には…
夏海は…人でなく…
魔界へ渡る
愛する人がいても…不安だろう
ましてや…我が子と別れて…
永遠に逢えぬ旅に出る
夏海を想えば…
胸が痛み出す
我が子が…選んだ道を…
親として守るつもりだった
何としてでも…守り通す
覚悟の瞳を雅龍へ送り
両親は帰って行った
夏海の母とお婆様も一緒に帰って行った