• テキストサイズ

鏡の中から

第12章 母になる





「親父殿…母上…何故?」

雅龍が問う

黄龍は苦笑して…

「お前に逢いに来た…と言わなんだか?」

息子の髪を、くしゃっと撫でた

「お前が人の世に見聞に行き…
1000年が過ぎた…
お前が選んだ道だ…
私達は…何も言わず見守ってきた
その間…私達が何も想わないでいたと想うのか?」

黄龍の言葉に…

子供を見送った…親の苦悩が伺える

親になる今なら…

親の苦悩が解る

雅龍は…「親父殿…」と言い…

言葉を詰まらせた

白龍は、雅龍を抱き締め

「お前は…魔界に飽きておった
つまらぬ顔で…日々生きていた
だから送り出した…
お前が何時か…戻って来ると信じて…
何も言わず…待っていたのです…」

今更ながらに知る…親の愛だった

雅龍は堪え切れず…涙を流した


「親になるのですよ…こんな泣き虫で…どうするのですか…」

白龍が雅龍の涙を拭い…

お婆様と香住に深々と頭を下げた

「雅龍の母の白龍と申します
雅龍の親として、夏海さんの…孫の顔を見に参りました」

「雅龍の父の黄龍と申します
本来…私達は人の世に現れてはならぬ存在
今回は特別に…許可を得て参りました」

許可を…得て…

それだけで…着実に…雅龍と夏海の行き先が…用意されつつあるのを感じずにはいられなかった



お婆様は「わざわさ遠い所をご足労であった…」と労った

香住は「夏海の母に御座います」と挨拶をした

雅龍の両親は…一見…人にしか見えなかった

だが、その姿は…紛れなく龍なのだと…感じていた

黄龍の髪は…やはり隠せず…金色の雅龍の髪を、少しだけ鈍くした…黄色に近かった

白龍の髪は…白髪…嫌…銀髪に近く…

二人は外人に見えた



/ 181ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp