第11章 宝物
「なら、病院に行かなきゃね…」
夏海が言うと、お婆様が
「なら、わしも行こうかのぉ~」
ほほほ!と返した
「義恭と逢うのは、幾久しいからのぉ」
「義恭…?」
誰それ…
夏海は首を傾げた
「飛鳥井 義恭 歴代飛鳥井家の御殿医をなさる家系の方じゃ」
何だか…もぉ~訳解らん
夏海は…どうでも良いから…
この吐き気を…
どうにかしてぇ~
と、想っていた
「夏海、病院へ行く
支度をしたら来るのじゃ」
お婆様はそう言うと、寝室から出て行った
香住が心配そうに夏海を見る
「支度を手伝おうか?」
「うんん。大丈夫。このまま行くわ」
「顔色が…悪い…」
香住は…夏海の頬に触れた
「吐き気が…凄いからね」
「悪阻ね…何時から?」
「7月の中頃から…気持ち悪さが…収まらないの…」
「体躯を冷やさない様にしないとね」
香住は夏海を立たせると、病院へ行く様に促す
「雅龍、夏海を支えて連れて来て頂戴」
「解った」
「車の中にいるからね。お願いね」
香住は、雅龍が解ったと返事をすると部屋から出て行った