第1章 全ての始まり
「なんで…?」
大事なところが抜けた本。
5人目の創設者の説明を誰が消したんだろう?
それとも最初から書かれてなかったのか…?
「ねえ、君」
後ろからぽん、と肩をたたかれた。
「え…?」
振り向くと一人の少年が立っていた。
金髪碧眼、色白の人形みたいな美少年だった。
身長は僕より少し高いくらい。だいたい3.4年生ぐらいだろう。
タイのカラーからしてレイブンクロー生だ。
「はぁ?君、レイブンクロー生だよね?
グリフィンドールの僕になにか用かい?」
そういった瞬間しまった、と思った。
いくら他寮の生徒だとしてもこんな嫌味な言い方はない。
いつもは冷静なリーマスも顔には出さずに慌てていた。
「うん、あるよ。
その本僕が借りようと思ってそこに置いておいたんだよね。
だから返してくれるかい?」
レイブンクロー生の顔はむっとしかめた。
「あっ」
そうだ。そもそもこの本は長テーブルの上に置いてあった。なんでそんなところに置いてあったのか?
そんなの借りようと思ったからしか考えられない。
「ああ、ごめんね。
でもその本、5人目の創設者の説明が綺麗に抜け落ちてるんだよ。だから別の本にしたほうが良いと思うよ。」
ちょっとした親切心でそういった瞬間、その少年はびっくりしたように口をあんぐりと開けた。
「ねえ、間違ってたらごめんね。君は人狼なのかい?それとも他の人外かい?」
突然の人狼、という単語に驚きびくっと肩を震わせた。
「な、なんで…」
声が震えてそれ以上何も言えなかった。
でも彼の顔は容易に想像できた。
きっと恐怖か憎しみの篭った目で睨まれているのだろう。
恐る恐る顔をあげると予想外の反応にビックリした。
なぜならその少年が睨むどころか目をキラキラ輝かせていたから。
「ああ、やっぱり!!実は僕も人外なんだ!
でも君、アグニ寮生じゃないよね?なのにこの本が読めたのかい?すごいや!」
早口で一気にまくしたてられて対応に戸惑った。
「君もなのかい?」
「いいや、僕の友達が人狼なんだ。僕はヴァンパイアさ。
あ、僕はユリエル・B・ドラクロワ。
表向きはレイブンクローの3年生だけど裏はアグニ寮生だ!よろしく!ええと…」
「リーマス・J・ルーピン、3年生さ。よろしくね、ユリエル」
この出会いがリーマスの運命を大きくかえることになる…
