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短編集【果物籠】

第3章 そろえましょ【夾】



真っ赤な夕陽を背に私と紅葉と春はまたケラケラとしょーもない話で盛り上がりながら帰路についていた。

私の家が近くなった時に、そういえばスマホ全然見てなかった。とポケットからそれを取り出す。

音がなる度に「夾からかも!」なんて期待をしたくなくて消音モードにしていたそれの画面を着けると…。


「……え」


一瞬見間違いかと思うほどのメッセージと着信の履歴。

そしてその相手がまたありえない。


「え、え…。夾から鬼のように連絡が来てるんだけど…なにこれバグ…?」


私の言葉に対して紅葉も春も何故かだんまりで。
戸惑いながら2人の顔を交互に見るが、2人の目線は前を向いたまま。

更に訳がわからず混乱していた。





「ひまり!!!!!」



とうとう幻聴まで聞こえるようになったか。と自身の耳の機能を疑いつつ声のする方へと恐る恐る目を向ける。
それは紅葉と春がずっと見ていた場所だった。


「え、夾?え、は?え?」


とうとう幻覚まで見るようになったか。と自身の目の機能までも疑った。

だが何度瞬きしても、そこにいるのはずっとずっと会いたくてたまらなくて。

私の精神を病ませていた夾だった。


険しい顔つきで肩で息をしている彼が、私と目が合った途端に走ってくる。


嬉しさと驚きと混乱と愛おしさと感動と戸惑いと困惑と…

とにかく頭の中は訳がわからずグッチャグチャの状態で、立ち尽くす私の手を引っ張り思い切り抱き締められた。

全力で走ってきたであろう夾の腕の中は、記憶にある彼の温もりよりも熱くて。
記憶していたものよりもたくましくなった胸板に胸が高なった。


いや、でも待って。

何で夾がここにいるの……?




「オイコラ紅葉。てめぇどういうつもりだ」

「ボク、キョーにちゃんと言ってたよー?ひまりを泣かせたらもらうからねーって」

「ま、今回のは夾が悪い」


3人の会話の内容がよく分からず、夾の腕の中で顔だけを動かして何もかもが理解出来ない私は彼らに説明を求めるように見回した。

それに気付いた夾が軽く舌打ちをして腕の力を少し緩めた。

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