第3章 そろえましょ【夾】
「なんつーか…その…色々準備してて…。お揃いが好きなお前にこっち来た時に喜んでほしくて…そのー…色々、茶碗とか箸とか、集めてたってーか…」
嬉しい。
ちゃんと迎えに来てくれる気でいたこととか、お揃い好きな私のために色々集めてくれてたとか…
たしかに、たしかに嬉しいんだけど…。
まだ何となく疑いを完全に晴らすことが出来なくて…。
じっとりと睨み付ける私を見た夾が、ガシガシと頭を雑に掻く。
その顔はほんのり赤くなっていた。
「あ〜〜!!バレたくなかったんだよ!俺は隠し事とか苦手だから…なんてーか…口が滑っちまいそうで連絡控えてたんだよ!!あー…その、不安にさせて、泣かせたのはホントにマジで悪かった…ごめん…」
「ねぇ、紅葉と春が知ってることって何なの?バレたくなかったって何が?」
こうなりゃ微塵も不安を残したくない。
夾の目をジッと見つめると、彼は眉を潜めたあと顔を真っ赤にして片手で顔を覆った。
わずかな沈黙の後。
「苗字」
「え?」
覆っていた手をどけると、真っ赤な顔で、真剣な眼差しで言った言葉の意味が理解出来なかったら。
「だから…今度は苗字を揃えんだよ!!草摩ひまりになってくれってことだよ!その為の準備してたンだよ!!」
ほぼヤケに近い状態で言う夾の言葉を理解するのに数十秒必要だった。
理解した時には私の顔も真っ赤になっていて、自然と口元が緩む。
「そ、そ、それ、それってプロ、プロポー…」
「あーもー、今顔見んじゃねー」
ギュッと抱きしめる夾の背中に手を回し、段々と上がるテンションで顔のニヤけが元に戻らない。
「なる!!なるよ!!お揃い!!私、草摩になるよ!!!」
夾の顔を見上げるとホッとしたように微笑んでいて、その顔がまた堪らなく愛おしかった。
「どうしよう!私草摩になるの?え、まって。嬉しい。信じられない!どうしよう!!嬉しい!!え、好き!夾好き!!大好き!愛してる!!」
「…うっせ。知ってるから。ちょっと黙っとけ」
呆れたように笑いながら、夾は片手で私の頬を包んで
優しいキスで私の口を塞いだ。
— fin —